ボトムブラケット(BB)の取り付け方法(装着)③四角軸 分解調整可能タイプ編 『ISO、JIS、BSC』(フレーム幅68mm、73mm)の場合 後編

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こんにちは、だいごろうです。

このコーナーでは普段、皆様が自転車に乗っていて疑問に思うことや、知りたいこと、お悩みなどについて、僕の知っている知識と経験を利用していただくことで解決のヒントになりそうな内容をまとめてみました。

第2段は『ボトムブラケット(BB)の交換 取り付け方法』です。

前回のカートリッジタイプ編に続き、実際の作業 分解調整可能タイプ編をお伝えします。
ボトムブラケット(BB)の取り付け方法(装着)③四角軸 分解調整可能タイプ編 『ISO、JIS、BSC』(フレーム幅68mm、73mm)の場合後編

前回、ボトムブラケット(BB)の取り付け方法(装着)③四角軸 分解調整可能タイプ編 『ISO、JIS、BSC』(フレーム幅68mm、73mm)の場合 前編にて左右ワンとシャフトの装着までをご説明いたしました。

後編は分解可能タイプの装着作業の最も難しい作業であるロックリングの取り付け方法についてお話致します。

それでは、ロックリング(緩み止め)を装着します。ロックリングの締め付けにはフックスパナ(旭金属工業)ASH 引掛スパナ45/48 FK0045 等を使用します。

ASH 引掛スパナ45/48 FK0045
by カエレバ

 

最終的にロックリングを強力に締め込み左ワンの緩みが出ないように固定するのですが、これには締め合わせという技法を用いて行います。今回のBBの場合には左ワンとロックリングそしてフレームのロックリングとの当り面の3か所で締め合わせることになります。

具体的には、先ほどまでの流れで左ワンを装着、シャフトの回転調整を行ったのち、ロックリングを左ワンにねじ込んでいきます。

最終的にロックリングがフレームに密着しキツく止まるまで締めこむのですが、単純にロックリングを締めこんだだけでは、締めこむ際に左ワンも釣られて回ってしまい、せっかく調整したシャフトの回転具合が変わってしまいます。

ですので左ワンを工具(モンキーレンチやカニ目スパナ等)で回らないように抑えながら、ロックリングを締め込みます。

ロックリングの締め付け具合はロックリングの素材自体にもよりますが強力に締めこむ必要があります。ここが緩んできてしまうと、走行中にBBにガタが発生し、最悪の場合、走行不能となりますのでしっかりと緩まないように締め込みます。

鉄製のロックリングの場合は相当強く締め込んでも大丈夫ですが、アルミ製のロックリングの場合はあまりに強力に締め込み過ぎるとネジ山が破損してしまう場合があります。

(ロックリングのネジ山部分の厚みは3mm程度しかありませんので強度は弱いです)とくに毎日、自転車を触っているショップのメカニックならともかく、一般の方の場合でしたらロックリングをどのくらいのトルクで締め付けたらよいのか分かりにくいかと思います。

鉄製のロックリングの締め付けトルクの数値的には一般的に300~500kgf・cm (30-50Nm)となりますが正直分かりにくいと思います。おおざっぱな表現で誠に申し訳ないですがかなり強力な力で締め付けます。先ほどの右ワンの装着と同じぐらいのトルクです。

アルミ製のロックリングの場合はそれほどまでに強力に締めこむと破損してしまいますので少し弱い締め付けとなります。ですが緩んでくると危険ですので、アルミ製のロックリングの場合には緩み止め剤(中強度ロックタイト)をロックリングのネジ山に塗っておくのも一つの手です。こうすることで簡単には緩まず安心して走行することができます。

LOCTITE(ロックタイト) ねじロック 243 中強度タイプ 10ml LNR-243
by カエレバ

余談ですが、僕は長年のメカニック経験の中で、マウンテンバイクの激しい使い方や、プロ選手の走行においてはメーカー指定のトルク値で締め付けていても、しばらくすると緩んで来てしまっている現象を数多く見てきました。

プロ選手やそれに近い用途の車両の場合には一般的な常識は通用しません。

例えばマウンテンバイクに新品のBBを装着しても、その日のうちにジャンプの着地でBBシャフトが折れてしまったりします。もう一度、新品に交換しても続けてまた折れてしまいます。あの焼き入れの入ったBBシャフトがいとも簡単にバキッと折れてしまうのです。

それに比べるとネジ山の緩みなんてもっと簡単に起きてしまいます。ですので激しい用途の車両は場合は鉄製、アルミ製を問わずロックタイトを塗っておりました。

人によってはロックタイトを使用するなんて格好悪いとおっしゃる方もいるかもしれません。そこまでしなくても大丈夫という方もいらっしゃるかもしれません。ですが僕は実際にトラブルが出ない自転車を作るのが一番カッコいいと思っております。

ロックタイトを塗ることでトラブルを回避できるのであれば、躊躇なく(ためらいなく)塗ります。

レースの世界では信頼性がとても重要です。どんなに優れている機材でも最後まで安心して使えなくてはリタイアという最悪の結果につながります。

途中で修理出来たとしても、修理中は練習走行も出来ませんし、選手にとっても、また同じトラブルが起こるのではないかと不安にさせる原因となってしまいます。ですのでそういったトラブルの要因を可能な限り省くのもプロメカニックの仕事だと思っております。

だいぶ話がそれてしまいましたが、BBの装着は一般の方にとっては滅多に行わない作業だと思います。ですので一連の流れの中で一番分かりにくいロックリングの締め付け具合には人それぞれトルクのバラつきがかなり出る作業かと思います。

もしもロックリングが緩むと左ワンが緩んで来て走行不能になります。走行不能までいかずともガタのある状態でそのまま乗り続けるとフレーム自体のネジ山にも影響が及びます。ですので初心者の方こそネジの緩み止め(中強度ロックタイト)をお勧め致します。

こうして左右の締め込みがきちんと完了したら、シャフトを手で回してみてスムースに回転するか確認します。

これで四角軸の分解調整可能タイプ『ISO、JIS、BSC』(フレーム幅68mm、73mm)の場合のボトムブラケットの取り付け作業は完了です。

最後に、四角軸のシャフトとクランクとの嵌め合わせ部分(テーパー部分)についてですが、僕はここにはグリスは塗らないようにしております。

メーカーの説明書を読むと、ここにグリスを塗るように記載されておりますが、僕はあえて塗っておりません。

これにはちゃんと理由があります。

このテーパー部分はシャフトに対してクランクを圧入する方式で固定されます。固定後、実走行時には乗られている人の体重や段差の衝撃等をすべてこのテーパー部分で支えています。その衝撃で実は圧入が緩みやすい部分でもあります。

グリスを塗ることでクランクがスムースに奥まで入り、一見、理にかなっているように思えますが、実は後々の実走行の衝撃時にグリスでクランクが滑り始めどんどん緩みが生じてきます。

その都度、または定期的にクランクボルトの増し締めを行えば問題ないのでしょうが、一般のお客様がクランクボルトの締め付けに定期的に店に訪れることはありません。納車後そのままずっと乗り続けていることがほとんどです。

ですのでどんどんクランクに緩みが生じ、ガタついてきて、とうとうクランク側の四角穴が変形してどうしようもなくガタガタになった時に初めてお店に訪れるという状況となります。こうなると新しいクランクに交換するしかありません。

そこで僕は実際に、説明書通りにグリスを塗ってからクランクを組付けた商品とグリスを塗らずにクランクを組付けた商品とを両方販売して統計を取ってみました。

明らかにグリスを塗らない方が後々のクランクの緩みが少なく、クランク自体の寿命が長くなりました。とくに競技等でハードに使用する方の場合はすぐに結果がでました。

このあたりの判断は説明書に反しての行動ですし、それぞれのメカニックの人の判断になりますが、僕はマニュアルよりも実際の結果を優先し、より安全でお客様からのクレームの少ない方法を取り入れております。

このお話はきっとどこを調べても出てこないここだけのお話かと思いますが、実際20年間毎日行ってきた結果得られてきた経験と知識ですのでよろしければご参考にしてください。

というわけで今回は『ボトムブラケット(BB)の取り付け方法(装着)③四角軸 分解調整可能タイプ編 『ISO、JIS、BSC』(フレーム幅68mm、73mm)の場合後編についてお話いたしましたがいかがでしたでしょうか?

♦ まとめ ♦

①ロックリングの適切な締め付け具合には経験が必要。緩み止め剤(ロックタイト)の使用もお勧め。

②四角軸のシャフトとクランクとの嵌めあい部分にはグリスを塗らない方が良い。

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