How To~ 自転車 問題解決大全
こんにちは、だいごろうです。
このコーナーでは普段、皆様が自転車に乗っていて疑問に思うことや、知りたいこと、お悩みなどについて、僕の知っている知識と経験を利用していただくことで解決のヒントになりそうな内容をまとめてみました。
第4段は『ISIS ボトムブラケット(BB)の交換 取り付け方法』です。
『ボトムブラケット(BB)の交換 取り付け方法(装着)⑤ISIS アイエスアイエス アイシス編』
基本的な手順は四角軸(スクエアテーパータイプ)と共通ですが、途中でISISならではのノウハウもございます。
それでは早速作業を開始しましょう。
まず最初にフレームのネジ山に大量にグリスを塗ります。
フレームのネジ山はピッチが細かくネジの焼き付き(B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ① を参照)を起こしやすい部分ですし、体重を支えたり、ペダルを漕いだ時の強大なねじれ力に耐えなければならない部分ですので絶対にグリスが必要です。
後々のキシミ音の発生を抑えるためにもグリスはケチらずにたっぷりとネジ山の端から端まで塗っておくのが好ましいです。
僕は今までの経験上この部分にはシマノのプレミアムグリスが最適だと考えています。実際にいろいろな製品を試してきましたが、他のグリスに比べて後々のキシミ音の発生が少ないように思います。
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フレームのネジ山にグリスを塗り終えたら車体の右側(ギア板のある側)のBBパーツをフレームにネジ込んでいきます。・『ISO、JIS、BSC』の取り付け。(フレーム幅68mm、73mm、83mm、100mm)の場合。
この際に右側に専用スペーサーを入れる必要がある場合にはスペーサーの両サイドや内側にもグリスを塗っておくことをお勧めいたします。異音の低減に効果があります。
『ISO、JIS、BSC』の場合は逆ネジ(時計と反対方向に回すと締まる)です。フレームの最後の突き当りまで軽くねじ込んで行きます。最終的に強力に締めこむのはまだ後の作業です。
次に左側のBBのパーツ(左カップ)を準備します。
まず最初に左カップの内側(内面)にグリスを塗ります。
ここは装着後にBBの右側の部品と接する部分ですので、ペダルを漕いだ時に強大な捻じれ力を受けてキシミ音が出る場合があります。ここもデュラエースグリスがお勧めです。
それではいよいよ左側のBBのパーツ(左カップ)をねじ込んでいきます。
こちらは正ネジ(時計回りに回すと締まります)カップが半分ぐらいフレームに入ったところで一旦ねじ込むのを止めます。
もしも途中で回転が止まってしまった場合は右側の部品に当たって(接触して)しまっているかもしれませんのでその場合は2、3回転ほど緩めます。
次に右側のBBパーツを強力に締めこみます。
トルク値は34Nm~41Nmとなっております。この値はプロメカニックでなければピンとこない数値かと思いますが、かなり強力な数値です。
ペダルの取り付けに必要なトルクと同等です。両手で工具を持ちしっかりと強い力で締めこむ感じです。力の弱い人の場合(女性の場合等)は本当に力いっぱいという感じです。
強力に締めこむ際に工具が外れてしまったり、ズレてしまうと危険ですので、できれば工具自体が外れないように工夫することも必要です。
この際に使用する工具はBBメーカーによって異なるのですが、ISIS BB専用の工具となっておりますので専用工具をご用意ください。
ちなみに、TRUVATIV製のISIS BBの場合はシマノのXTR BB用工具『TL-UN96-A』でも使用可能です。
パークツール(ParkTool) ボトムブラケットツール XTR/ISISドライブBB用 BBT-18 | ||||
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SHIMANO(シマノ) フロントチェーンホイール/BB専用工具 TL-UN96-A Y13009072 | ||||
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FSA及びRACE FACE製のISIS BBの場合は下記のようなISIS専用の工具が必要です。(シマノのBB工具『TL-UN74-S』は見た感じスプライン形状が近いように見えますが、若干サイズが異なっておりますので使用できません。)
FSA ISIS BBカップツール | ||||
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パークツール(ParkTool) ボトムブラケットツール オーバーサイズシャフト用 BBT-22 | ||||
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さきほど左カップを最後まで締め切らなかった理由はこの強力な締め付けトルクを必要とする作業にあります。
右ワンの締め付けが強力なためフレーム及びBBのネジ山部分にも相当な力がかかります。BBを締め付ける工具の相対的な位置関係から、フレームのネジ山部分には強大ねじれ力が働きます。
フレームのネジ山を保護する為にもこのねじれを抑える必要があります。そこで左カップを事前に途中まで締めこんでおくことで右側のBBパーツねじれを内側から支えネジ山に余計な力がかからないようにします。
次に左カップを強力に締めこみます。
こちらは右側に比べると若干ですが弱いトルクでも大丈夫です。
ISISのBBの場合は左カップを強力に締めこむとベアリングに圧力がかかって軸の回転が悪くなるモデルも存在します。ですので影響の出ない程度にきつく締めこみます。
こうして左右の締め込みがきちんと完了したら、シャフトを手で回してみてスムースに回転するか確認します。
問題なければ作業完了です。
基本的には先ほどの『ISO、JIS、BSC』規格と右側(ギア板のある側)のネジ山の向き(締め付ける際の方向)が異なっているだけで作業工程は同じです。
『イタリアン』の場合は右ワンは正ネジ(時計方向に回すと締まる)です。
その他の作業はJIS規格のBBと同じ作業工程です。
これでISISのボトムブラケットの取り付け作業は完了です。
ここで、20年間プロショップ勤めで経験してきたことによる私のアドバイスですが、ISISのBBとクランクの嵌め合わせ部分は四角軸のように強力な圧入ではありません。
嵌合部分には厳密にはテーパー角度が1度付いているのですが、1度ですから角度がとても緩く、ほとんど、ただ溝と溝の位置を合わせているだけです。
ですのでクランク取り付けボルトが緩んでしまうと、いとも簡単にクランクが外れてしまいます。ですのでクランク取り付けボルトは緩まないようにシッカリと締め切っておく必要があります。
クランクがBBシャフトにこれ以上入らないようにする為のクランクストッパーと呼ばれる段差の部分に接触するまでしっかりと入ってからも、最後に強く締めておくことでクランクの緩みを防止できます。
また、ほぼ圧入ではありませんので四角軸の時のようにシャフトとクランクの接触部分の滑りによる緩みはありません。
四角軸の時はテーパー部分にグリスを塗ることはお勧めしておりませんでしたが、ISIS BBの場合は異音の排除の為に勘合部分(BBシャフトとクランクの溝部分)にグリスを塗っておくことが好ましいです。
ISIS自身もスプライン部分にグリスを塗ることを推奨しております。この場合のグリスもシマノのプレミアムグリスがおすすめです。
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(詳しくは B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ①および B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ② をご参照ください。)次にクランクボルトの取り付けに関してですが、ボルトのネジ山はもちろんですが付属のワッシャーにもグリスを塗っておくのが好ましいです。ここも異音と取り付け時の摩擦に影響が出ます。
あと、クランクボルトに付属のワッシャーは必ず入れてください。ワッシャーを入れずにボルトを締め付けるとクランクのスプライン部分のボルトとの接触面を傷めてしまう可能性があります。
最後に、クランクの取り外しの際にはISIS BB対応のクランク抜き工具をご使用ください。
シマノクランクのみに対応したクランク抜き工具の場合、工具メーカーにもよりますが、工具のBBシャフト軸を押す部分のシャフトへのかかり具合が薄く工具自体がシャフトの内側にめり込んで行ってしまいBBシャフトのネジ山を破壊してしまう恐れがあります。
パークツール(ParkTool) クランクプーラー 角型、オクタリンク、ISIS規格用 CWP-7 | ||||
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というわけで今回は『ボトムブラケット(BB)の交換 取り付け方法(装着)⑤ISIS アイエスアイエス アイシス編』についてお話いたしましたがいかがでしたでしょうか?
♦ まとめ ♦
①フレームのネジ山部分にはグリスをたっぷりと塗る
②BBの締め付け手順には順番と各規格ごとに締め付け方向が異なる
③ISIS BBの取り付けおよびクランクの取り外し時にはISIS専用の工具が必要
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