B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ①

B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ①

こんにちは、だいごろうです。

今回は自転車に多数使用されている、ボルト(ネジ)ついて考えていきたいと思います。

『B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ①』です。

この記事はテキスト版のほかに、音声で記事を読み上げる音声版もご用意しております。音声でお聞きになりたい方は下記をご再生ください。(音が出ます)

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目次

自転車はボルトがすべて!!

自転車にはボルト(ネジ)がたくさん使われております。なに当たり前のこと言ってんだよ!!って思われるかもしれませんが、この当たり前のボルトについて深く考えたことはありますか?と聞かれると、多くの方がこの問に対して、そんなこと、いちいち考えてないよ!!とお答えになるのではないでしょうか。

でも、じつは自転車を構成するうえでボルトはとても重要な役割を果たしています。『自転車のほぼ全て(100%)の部品がボルトで固定』されており、ボルトが無ければ自転車は成り立ちません。

自転車本来のパフォーマンスを最大限発揮する為には適切な取り扱いと最適な締め付け具合が必要です。さらに万が一ボルトの締め忘れがあった場合には、乗り物という特性上、重大な事故にもなりかねません。ボルトは疎かにしてはならないのです。

僕はこのボルト(ネジ)に対してはとても敬意を払っています。

最初に発明したのはおそらくアルキメデスだとか、日本の最初のネジは火縄銃だとか、そんなことはここでは置いといて、ここでは実際に自転車を組み立てる際に必要な知識についてお話したいと思います。

意外と知られていないボルト(ネジ)の重要なポイントとは⁉

ボルトの仕組みと摩擦熱

まず大前提として、ボルト(ネジ)はらせん状の溝』で構成されております。この溝がボルトを締めこむことによって相手側(ナット)の溝に入り込んでいきます。

当たり前のことですが、この溝部分を拡大して見てみるとボルトの溝とナットの溝が擦れ合わせてボルトはどんどん奥に入っていきます。

つまり、ボルトやナットを締めたり緩めたりして回転させている時間は常に金属の溝と溝が擦れ合っていることになります。では、擦り合わせると一体どんなことが起こるのでしょうか?

この世の中の物質は表面と表面を擦れ合わせることで摩擦熱(まさつねつ)が発生する

そうです、擦り合わせると摩擦熱(まさつねつ)というものが発生するのです。

この摩擦熱というものは実はものすごく巨大なパワーを秘めていて、そのパワーは様々な物に利用されています。例を挙げるとすれば自動車のブレーキなどがあります。

自動車はブレーキをかけるときブレーキローターという回転する板をブレーキパッドという物質で挟み込み運動エネルギーを摩擦で発生する熱に変換する仕組みです。

普通車でも重量が1~2トンもあるにもかかわらず時速100km以上でも素早く減速し止まることができます。トラックなどの大型車の場合は数十トンもの重量があります。それが摩擦で発生する熱で止まるのです。摩擦熱は本当にものすごい力を秘めているのです。

強大な摩擦熱!!

さて、話をボルトに戻します。ボルト(ネジ)はナットや部品自体に切られたネジ山(雌ネジ)にらせん状の溝を嵌め合わせながら回転し奥に入り込んでいきます。この時、この擦れ合わさっている部分はその摩擦により一時的ですがかなりの熱が発生しています。

そこで時折、ボルトの焼き付き(かじり)が起こります。これはボルトが締めこんでいる途中でナットと固着してしまい、締めも緩めも出来なくなってしまう状態のことです。

どうしてこの現象が起きてしまうのかというと、じつはボルトとナットが擦れて発生した熱があまりにも高温なためにボルトやナットの溝の表面が熱で溶解してくっついてしまうのです。

あの冷たい金属がバーナーで炙ったわけでもなく溶鉱炉に入れたわけでもなくただボルトを締めただけで摩擦熱により超高温になり溶けてくっついてしまうのです。摩擦熱とはなんと強大な力なことか・・・

こうして摩擦によって引き起こされたボルトの焼き付き(かじり)がおきてしまうとボルトもそうですしナット側(多くは部品自体)のネジ山(溝)が壊れてしまったことになります。

一度壊れてしまったネジ山は元には戻りません。高級な部品が壊れてしまっても問題ですし、そうでなくてもネジが緩まなくなってしまったのであれば取り外すことも出来ず組み立て作業に多大な影響が出てしまいます。

ボルトの焼き付き(かじり)を防止するには?

では焼き付きはどうやって回避すればよいかというと、おおまかには2種類の方法があります。

一つ目の方法は潤滑剤をネジ山(溝)に塗ってあげることです。何でもそうですが摩擦を軽減し滑りを良くするには潤滑剤が有効です。

ボルト(ネジ)の場合は例えばスプレー式の油の場合もありますし、グリスを塗る場合もあります。

自転車の整備に最適な潤滑剤とは?

例えばボルトを部品に締め込む際におススメな潤滑剤はグリスタイプが垂れてきたりせず扱いやすいです。グリスは経年での揮発にも強く長期間にわたって効果を保つことが可能です。

僕のおすすめのグリスは『フィニッシュライン(FINISH LINE) プレミアムテフロン強化グリース』です。丁度よい硬さでボルトに塗りやすく色も白色なのではみ出しても汚れたようには見えません。

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by カエレバ

こういった潤滑剤を用いることで、ボルトとナットの間に滑りが生じ、摩擦は一気に減ります。これで焼き付きもほぼ防止されることになります。

次にナットを締め込む際におススメな潤滑剤はオイルスプレーです。例えばママチャリなどの自転車のハブシャフトに締め付けるナットなどがそれに当たります。

ナットの場合はナット自体に潤滑剤を塗布するのは少し作業がやりにくいですからシャフト側に潤滑剤を塗布する方が作業が行いやすいです。そこでスプレー式のオイルをシュッを吹きかけてあげれば楽に潤滑剤を塗布できます。

おススメのスプレーオイルはブリヂストンの下記の商品です。塗布直後は素晴らしい滑りを、そして時間が経つと比較的ベタつかず埃や汚れが付きにくくおススメです。

by カエレバ

また、二つ目の方法はボルトを締める回転速度を遅くすることです。ボルトを早く回転させればそれだけ発生する熱も高くなります。ですのでゆっくりとネジを回すことで摩擦熱を抑えることができます。

潤滑剤なんて使ったことないけど⁉

でもそんな潤滑剤なんて使わなくても今まで焼き付いたことなんてないよ、とおっしゃる方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。

でもそれはたまたま今まで焼き付いていなかっただけであって、何台も何台もそれこそショップの方でしたら何百台、何千台と作業していけばあっという間に起こってしまう現象です。

さらに今まで起きていなかったからといって、そのボルトやナット(部品自体)のネジ山にダメージが無かったかというと、多かれ少なかれ必ずダメージはあります。なぜなら摩擦は絶対に起きているからです。

例えば、潤滑剤を塗っていないボルトを同じ部品の同じネジ穴に何度も締めこんだり緩めたりしてみると想像してみてください。一度でも焼き付きを経験した人でしたらそんな行為は怖くてできないと思います。

つまり潤滑剤を塗っていない状態でボルトを締めこむことは部品を傷めているということになります。愛車を長く乗る為にもお客様にベストな状態でお乗りいただくためにもボルトに潤滑剤を塗ることは必須だといえます。

さらに潤滑剤を塗っていない状態での締め付けは締め付けトルク(ねじを回して締め付けるときに回転方向に回す力)が適切でない可能性が高いです。原因はさきほどの通り摩擦抵抗がものすごく発生している為です。

とくに自転車の場合、自転車向けに開発されたピッチの細かい(溝の間隔が狭い)ボルトの箇所があります。例えばハブシャフトのネジ山などがそうです。こういった箇所はさらに焼き付きやすいので必ず潤滑剤を塗布しましょう。

また、素材によっても焼き付きやすさが異なります。ステンレスやアルミ、チタンなどは焼き付きやすい素材です。これらの素材は熱が発生しやすく発散しにくいため注意が必要です。

とくにステンレス製のボルトは錆びにくい特性があるためスポーツ車ではよく使われておりますので油断して焼き付かないように注意しましょう。

最後に、チタンボルトやチタンの部品にボルトを締めこむ場合には専用の潤滑剤(チタングリス)をお使いください。チタンは特に摩擦で焼き付きやすいですので注意が必要です。例えば「パークツール(ParkTool) 金属結合防止剤 焼付き防止剤 ASC-1」がお勧めです。

パークツール(ParkTool) 金属結合防止剤 焼付き防止剤 ASC-1
by カエレバ

というわけで今回は『B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ①』についてお話いたしましたがいかがでしたでしょうか?

次回、B BOLT 自転車のボルト(ネジ)について考える ②では実際の整備時に有用な具体例を交えながらにより深くボルトについて考えてみたいと思います。

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♦ まとめ ♦

①ボルトの締め忘れは危険!!

②ボルトには潤滑剤が必要

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