C カンチレバーブレーキ(cantilever brake) カンチブレーキについて考える。その① カンチブレーキとは?

こんにちは、だいごろうです。

今回は自転車のブレーキの一種であるカンチブレーキについて考えていきたいと思います。

『 C カンチレバーブレーキ(cantilever brake) カンチブレーキについて考える。その① カンチブレーキとは?』です。

自転車のブレーキの仕組みは数種類ありますが比較的メジャーな仕組みで広く活用されているブレーキの一つにカンチレバーブレーキ(以下カンチブレーキというブレーキがあります。

現在では自転車のブレーキはロードバイクはキャリパーブレーキ(デュアルピボットキャリパーブレーキやサイドプルキャリパーブレーキ)、マウンテンバイクではディスクブレーキや V ブレーキがメインとなっておりますが、とくに一昔前までのマウンテンバイクにおいてはカンチブレーキが主流となっておりました。

現在でもシクロクロスやツーリング車においてはカンチブレーキが使われています。

それではこのカンチブレーキについて詳しく見てみましょう。

目次

カンチブレーキの歴史

カンチブレーキは実はとても古い時代から登場しております。戦後のフランスで『Securité』(セキュライト)という会社が設立され1947年に『MAFAC』(マファック)と改名されましたが、この当時からすでにMAFACのカンチブレーキは発売されておりました。

(画像は1960年代のMAFACの資料)

MAFACのカンチブレーキは1980年代の初期頃まで生産され、1970年後期頃からはサイドプルキャリパーブレーキも販売しておりました。その後、会社が倒産する1980年代後半までMAFACのブレーキは販売されておりました。

古くから様々なブレーキの仕組みが自転車で採用されてきましたが1970年代以降においてはサイドプルキャリパーブレーキが次第にメジャーなブレーキとなってきておりました。

(画像は1970年代に発売されていたDIA-WEINMANN サイドプルキャリパーブレーキ)

サイドプルキャリパーブレーキは構造がシンプルなため比較的調整がしやすく軽量なパーツ構成となっております。特にママチャリやロードバイクなど比較的タイヤの細い自転車に関しては現在でも使われており長年採用されております。

1980年代に入りマウンテンバイクが登場するとタイヤとブレーキのクリアランスの確保が重要となりました。

また、サイドプルキャリパーブレーキのキャリパーアームを長くするという方法では、アーム自体のたわみが非常に大きくなってしまい強力な制動力が得にくいことから再びカンチブレーキが注目されることとなります。

初期の頃のカンチブレーキはWide-profile』(ワイドプロファイル)と呼ばれ左右のブレーキキャリパーの張り出しが大きなデザインとなっております。

(さきほどのMAFACの画像のブレーキがワイドプロファイル)

ワイドプロファイルのカンチブレーキはブレーキ自体の左右への張り出しが非常に大きいデザインですが、シクロクロスの自転車やツーリング車等のサイズの大きな自転車では特に問題はありませんでした。

現在でもタイヤクリアランスが大きく軽量なカンチブレーキはシクロクロスで特に人気です。

by カエレバ

しかしながら26インチのマウンテンバイクではシートステーに取り付けられたブレーキ本体とライダーの足のかかとが干渉してしまうという問題が発生しよりコンパクトなブレーキが必要となりました。

そこでマウンテンバイクのリアブレーキに関してはUブレーキが採用され剛性の高いチェーンステー下側に装着されることが多くなりました。このように1990年代の初頭ぐらいまではマウンテンバイクのブレーキはフロントはワイドプロファイルのカンチブレーキ、リアは Uブレーキという組み合わせが一般的でした。

しかしながらチェーンステー下に取り付けられた U ブレーキは泥の影響を受けやすいというデメリットもあることからクロスカントリーの人気とともに改善の必要が出てきました。

そこで登場したのがMedium-profile』(ミディアムプロファイル)のカンチブレーキです。このブレーキは後の 『V ブレーキ』が登場するまでの間、幅広く世の中に浸透し、カンチブレーキの全盛期を築きました。一般的にカンチブレーキと認識されている一番メジャーなスタイルのカンチブレーキです。

(画像はミディアムプロファイルのカンチブレーキにオプションのブレーキブースター(青いプレート状のパーツ)を装着した状態。ブースターを取り付けることでフレームの広がりを抑え制動力がアップする)

特徴はアーチワイヤーをより短く設定しブレーキキャリパーの左右への張り出し量を小さくしたことでブレーキ全体としてコンパクトな設計となったことです。これによりシートステーにブレーキを取り付けた場合でもライダーの足との干渉が起こらなくなりました。

また、ワイヤーとブレーキキャリパー本体、ブレーキシューの位置関係から重要とされるカンチレバー角度が90°となったことで幅広いセッティングが可能となり優れたブレーキとなりました。

より制動力の高い V ブレーキの登場までこのミディアムプロファイルのカンチブレーキがマウンテンバイクにおいては圧倒的なシェアを占め様々なメーカーからデザインやアルマイトカラーが美しいモデルが発売されました。

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Low-profile』(ロープロファイル)とよばれるより左右への張り出し量が少ないカンチブレーキも存在します。輪行の多いツーリング車や折りたたみ自転車に採用されている場合があります。

また『ロングアームカンチブレーキ』というカテゴリーでブレーキを販売しているブランドもありますが、このタイプはいわゆる『Vブレーキ』タイプですので、この記事で取り上げているカンチブレーキとは異なります。

 

カンチブレーキのパーツ構成

カンチブレーキ本体

カンチブレーキは大まかに左右に分かれたブレーキキャリパー、それらをつなぐアーチワイヤー(別名ストラドルケーブル)、アーチワイヤーとインナーワイヤーとを繋ぐチドリの三つの部位で構成されております。

余談ですが、日本では一般的にチドリと呼ばれているパーツは海外ではブレーキケーブルキャリアと呼ばれています。チドリとはいかにも日本的な解釈ですね(笑)

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アウターワイヤー受け(ブレーキケーブルストッパー)

また 仕組み上、ブレーキ本体にはアウターワイヤーを固定する箇所がないことから、フレームもしくはフォーク等にアウターワイヤー受け(ブレーキケーブルストッパー)が必要です。

アウターワイヤー受けが装着できないフレームに関してはカンチブレーキの取り付けはできません。

(画像はフォークブレーズにアウター受けが付いているサスペンションフォーク)

アウターワイヤー受け(ブレーキケーブルストッパー)にはヘッドパーツの間に取り付けるものやステム自体にアウター受けがついているもの、サスペンションフロントフォークのブレーズにアウター受けがついているもの、シートピンに取り付けるものなど多くの種類が存在します。

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ワイヤーフック

また、実はとても重要なパーツとしてワイヤーのフックがあります。カンチブレーキは構造上、ブレーキのインナーワイヤーが劣化等で傷んで切れて(破断)してしまった場合にはブレーキキャリパー自体がテンションスプリングの力で左右に開きます。

するとキャリパーを左右で繋いでいたアーチワイヤーは下方向に引っ張られタイヤに干渉することとなります、この結果、走行中にインナーワイヤーが切れてしまった場合には突然アーチワイヤーがタイヤに引っかかり急ブレーキがかかり前転する原因となります。

この現象は非常に危険ですので当時のフロントフォーク(リジットフォーク)にはフックが取り付けられワイヤーが切れてもフックに引っかかるように安全対策がなされておりました。 

これはとくに昔のワイドプロファイルのブレーキの時代にはとても重要なパーツでした。

カンチブレーキ用のブレーキ台座

カンチブレーキの台座(スタッズと呼ぶ場合もある)はVブレーキと共通となっております。

歴史的にはカンチブレーキ台座にそのまま取り付け可能という形式でVブレーキが開発されたのでカンチブレーキ台座にVブレーキも取り付けられると言った方が正しいかもしれません。

特徴は台座(スタッズ)の根本付近にテンションスプリング用の穴(1個~3個の場合がある)が付いていることです。根元に穴の無いタイプはカンチブレーキ用の台座(スタッズ)ではなく『Uブレーキ用』の台座です。

カンチブレーキのブレーキシューの種類

最近のカンチブレーキのブレーキシューは取り付けの形状が V ブレーキと共通のデザインとなっておりますが、全盛期の頃のカンチブレーキのシューの取り付け形状は V ブレーキとは異なっております。

ブレーキシュー本体から出ている棒状の部分をキャリパー本体のホルダーに差し込んで挟んで固定する仕組みとなっております。このホルダーは俗に『ギロチン』(笑)とも呼ばれております。

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ブレーキシューにはカートリッジタイプと呼ばれるブレーキシューのホルダー部分とブレーキシュー本体(摩擦材部分)とが取り外し可能なモデルがありブレーキシューの交換が容易に行えるモデルもあります。

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またブレーキシューの専門メーカーである『KOOLSTOP』(クールストップ)からは『MAFAC』のブレーキに対応したブレーキシューも発売されております。

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というわけで今回は『 C カンチレバーブレーキ(cantilever brake) カンチブレーキについて考える。その① カンチブレーキとは?』についてお話いたしましたがいかがでしたでしょうか?

次回はカンチブレーキのメリットやデメリット、調整のコツ等について20年間のショップ勤めで経験してきたことも含めて解説していきたいと思います。

♦ まとめ ♦

①カンチレバーブレーキの歴史はとても古く、1940年代には既に発売されていた。

②基本的な種類は『Wide-profile』(ワイドプロファイル),『Medium-profile』(ミディアムプロファイル),『Low-profile』(ロープロファイル)の3種類。

③カンチブレーキはアウターワイヤー受け(ケーブルストッパー)が無い自転車には装着できない。(ケーブルストッパーが別途必要)

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